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驚異のレオ・ヌッチ
レオ・ヌッチ バリトンリサイタル(2014年11月28日 東京オペラシティ・コンサートホール)

武田雅人

一昨年の「デビュー45周年記念リサイタル」に引き続いてのレオ・ヌッチ来日リサイタルが行われました。
その時の彼の「健在ぶり」からも急な衰えはあり得ないとは思っていましたが、その想像を超える圧倒的な現役ぶり、72歳という年齢は彼の場合まったくハンディにならないようです。声の輝かしさ、表現力、演技力において間違いなく今でも超一流であることを見せつけてくれました。

今回のプログラムは、最初に《セヴィリアの理髪師》のフィガロ登場のアリア。これはヌッチが1981年のスカラ来日公演で日本初登場したときの役。彼もそれを意識しているのでしょうか。アンコール(全部で7曲!)の最後も同じこのアリアで締めくくりました。
今でこそヴェルディ・バリトンの第一人者ヌッチも、もともとはこうした軽快な役を得意としたもの。そうした自家薬籠中の役柄を、きわめて速いテンポで軽々とうたいあげました。
アバド指揮、ポンネル演出、ヴァレンティーニ=テラーニ、アライサ、ダーラ、フルラネットらと共演したあの名舞台の衝撃を改めて思い出させてくれました。
それにつけても思うのは、これらの人々の中で今でも超一流の現役なのは7歳年下のフルラネットとヌッチのみ、ということ。その意味でも感慨深い公演でした。

その後の前半のプログラムは歌曲(カンツォーネ)。ファルヴォ<彼女に告げて>、デ・クルティス<夜の声>、ディ・カプア<マリア・マリ>、ヴェルディ<亡命者>。
伴奏は、イタリアン・オペラ・チェンバーという弦楽四重奏にピアノとハープを加えて室内アンサンブル。2年前のサンケイホール・ブリーゼでの公演の時のクィンテット(5重奏団)に第2ヴァイオリンが加わり、よりオーケストラらしい響きとなり、ヌッチとの息も合ってきたようです。彼がいちいち手で合図をしなくても自律的に演奏するようになっていました。
前回は、歌曲の場合ピアノ伴奏に比べてインタープレイに欠くような感じがしたものでしたが、今回はその辺がよくなっていたように思います。

しかし、やはりヌッチの真骨頂は後半のオペラのアリア。ベッリーニ《清教徒》より<ああ、永遠におまえを失った>、プッチーニ《ジャンニ・スキッキ》より<ああ、勝利だ!~頭の上にはナイトキャップ>、ジョルダーノ《アンドレア・シェニエ》より<祖国の敵>、そして《ドン・カルロ》より<終わりの日が来た>。

《清教徒》のリッカルドのアリアは、ベル・カントのスタイルを意識してかヌッチにしては淡泊な表現でしたが、声の輝かしさと確かな技術を生かした端正な演奏。
それとの対比が鮮やかだったのが、続くジャンニ・スキッキとジェラールのアリア。ヴェリズモ風の強いアクセントで濃密な人物像を描きます。こうしたキャラクターを自在に塗り分ける芸の力には舌を巻かざるを得ません。
そして圧巻は《ドン・カルロ》のアリア。このヴェルディ・バリトンの典型といえる自己犠牲的英雄ロドリーゴの役は、どちらかというと男らしい色気に満ちた声をスタイリッシュに歌い上げるバスティアニーニやフヴォロストフスキーのようなバリトンに向いた役柄と私は思っていました。これらの姿も声もハンサムなバリトンたちによって歌われるロドリーゴの死の場面は、どうかすると「自己犠牲」の陰に「自己愛」がほの見えます。

ところが、性格的、父親的表現にすぐれたヌッチが造形するポーサ公爵は、(たとえば山本周五郎の『樅の木は残った』の原田甲斐にみられるような)武士道的ストイシズムが感じられる自己犠牲観が見えるといったら、大げさでしょうか。とにかく「父親系」バリトンがこのアリアを歌う場合のひとつのいき方を示していたように感じました。

こうして、本プログラムは全て終了。
そして、ここからがヌッチの凄いところです。2年前のリサイタルでもアンコールを5曲歌って、その旺盛なサービス精神と声のスタミナに驚かされたものですが、今回は前述したように7曲も歌ってくれたのです。しかも、最後までその声にはいっさいの翳りも揺らぎもありませんでした。
しかも本プロの間は、前半、後半とも間に2曲ずつ器楽のみの演奏が挿入されて休憩時間があったのに、アンコールは7曲全曲連続です。そのうえ最初の3曲が全てヴェルディのアリアだったのです。
つまりヴェルディは本プロ最後のロドリーゴのアリアを入れて4連投。これがいかに大変なものであるかは、歌ったものにしかわからないかもしれません。バリトン歌手にとってのヴェルディのアリアはそれほど「重い」ものなのです。

アンコールの最初は《リゴレット》より<廷臣たちよ、卑劣な輩よ(通称:悪魔め、鬼め)>。ヌッチ最高の当たり役ですから、これを歌ってくれたのは予想どおり。指折り数えてみたところ私がヌッチのこのアリアのナマで聴くのはオペラ公演を含めて7回目になりますが、いつも素晴らしいというだけでなく、ますます芸に磨きがかかっているように思えます。
アンコールの2曲目は《ラ・トラヴィアータ》より<プロヴァンスの海と大地>。怒りと悲嘆のエネルギーが爆発すうる前の曲に比べると静かでしみじみとした味わいの名曲ですが、実は老父によって歌われるにしてはテッシトゥーラが高めであり決して余力で歌えるようなしろものではありません。そうした静的なエネルギーの熱さを十分に感じさせる熱唱で、そのパワーは衰えることを知りません。
そしてヴェルディ4連投の極めつけが《仮面舞踏会》の<おまえこそ心を汚すもの>。男としての誇りを傷つけられた怒りと悲しみを激情と抑制のはざまの緊張感に満ちた暗い情念の中に描くこのアリアこそまさにヴェルディ・バリトンのあらゆる要素が詰まったもの。なまじのエネルギーで歌いきれるものではありません。それをこのように見事な歌唱で演奏してみせるのですから、ただもう凄いとしかいいようがありませんでした。

そのあとはイタリア演歌調のカンツォーネを3曲。その最後の「Non ti scordardi me(忘れな草)」では観客にも歌うことを勧めるところは2年前と同じです。ヌッチのサービス精神がよく表れていると同時に、これが最後かもしれないので忘れないでほしい、というメッセージがこめられているのでしょう。
そこで終わってもよかったのですが、鳴りやまぬ拍手に彼が答えたのが、冒頭にも申し上げたとおりフィガロのアリアで終わる、というものでした。そこに込められた彼の思いを胸に、温かく勇気づけられた気持で会場を後にしました。




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