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2004年夏のヴェローナ(その1)

武田雅人

 知り合いに「夏休みをとる予定」と言うと、「やっぱり、いつものあそこ?」と言われるようになりました。私ども夫婦がヴェローナに出かけるのは今年で6回目。98年からは1年置きに来ていますから、恒例化してしまった、といってよいかも知れません。今年は、50歳到達による「リフレッシュ休暇」が会社から貰える、ということで、行き先をあれこれ考えたのですが、つまる所、またここに来てしまいました。「病みつき」といってよいでしょう。大好きなヴェルディのオペラを、オペラハウスとは違う広大なステージ、大編成の合唱とオーケストラ、そしてそれに負けない強い声を持った歌手達で聴ける、この醍醐味は、何度来ても味わい尽くせないものがあります。

 今年の第82回アレーナ・ディ・ヴェローナ音楽祭は、チェドリンス主演、ゼッフィレッリの新演出による《蝶々夫人》で6月19日に開幕したのですが、ヴェルディ教徒である私達は、《イル・トロヴァトーレ》、《ラ・トラヴィアータ(椿姫)》、《リゴレット》、《アイーダ》を4夜連続して聞ける、8月の後半を選びました。以前に比べると、シーズン後半になっても、キャストの質も必ずしも落ちなくなってきていますし、若い才能をここで発見するのも楽しみのひとつです。



Arena di Verona外観Arena di Verona外観

1.8月19日(木)
《イル・トロヴァトーレ》

 前日にミラノへJALの直行便で入り、レンタカーで市内にはいり1泊。翌日、ミラノで少し買い物をしたあと、ヴェローナに入ります。フェリエ(夏休み)で市民が殆ど出払っていて閑散とした大都市ミラノに比べると、ヴェローナの市内は観光客でごった返し、活気があります。今年は幸運にも、高校時代の友人が当地現法の社長で駐在しており、彼の手配により、市内のまん真中、メインストリートのマッツィーニ通りに面した4つ星ホテル「アッカデミア」に宿をとることができました。アレーナのあるブラ広場にも徒歩5分という便利さです。

 ヴェローナは小さな街で、そこに2万人を収容するアレーナ・オペラやロミオとジュリエット関連の遺跡(?)その他の観光地目当てのヴァカンス客が押し寄せるのですから、宿の確保が一番の問題です。いつもは、郊外のモーターホテルに宿泊し、レンタカーを運転して市内の駐車場に入れ、オペラを観たあとの深夜にまた運転して帰るというパターンでした。それが城壁の中に泊まることができ、しかも、あのマリア・カラスがイタリア・デビューした時(アレーナ公演の《ジョコンダ》)に泊まったホテルに部屋をとれたのですから、大変な幸運です。古い建物ですが内装・設備は新しく快適でした。
 ホテルに着き、荷解きが終わるとまずチケットオフィスに出かけて、インターネットで購入しておいたオペラの切符を受け取ります。今年の特等席(ポルトロニッシマ)の値段は、週末(金・土)が157エウロ(約22,000円)、平日が142エウロ(約2万円)です。その夜はアレーナに近いトラットリア「トレ・マルケッティ」で食事をしました。トラットリアといっても以前にミシュラン1つ星をとったこともある料理は本格的なヴェネト料理で、ワイン・リストも充実しています。今回は、地元アッレグリーニの「ラ・ポイア98年」を注文したところ店主も満足そうでした。このワインは大好きで何度も飲んだことがあるのですが、やはり地元で飲む味は格別です。この店のジノリ特注絵皿には、ヴェローナ音楽祭開始(1913年)から1979年までにアレーナに出演した、歌手、指揮者、バレリーナ約80人の漫画が描かれています。カラスやベルゴンツィは特徴的な姿なのですぐにわかるのですが、わかりにくい人物も沢山います。妻とああだこうだと言い合っていると、ウェイターが、どの漫画が誰でいつ何に出演したかを番号入りで解説したパンフレットを持ってきてくれました。

トレ・マルケッティの絵皿トレ・マルケッティの絵皿
 ゆっくり食事をしたあと、夜9時からオペラが始まります。古代ローマ円形劇場(アンフィテアトロ)の石作りのアーチをくぐる時には、いつもながら畏敬の念に打たれます。
2000年近い時を経て、いまだに現役で劇場として機能し続けているのですから。

 《イル・トロヴァトーレ》
配役
ルーナ伯爵:アルベルト・ガザーレ
レオノーラ:ソンドラ・ラドワノフスキ
アズチェーナ:ティチーナ・ヴォーン
マンリーコ:マルコ・ベルティ
フェランド:エンリコ・ローリ
イネス:ソニア・ザラメッラ
ルイス:ジャンルーカ・フローリス

指揮は、ピエル・ジョルジョ・モランディ
演出・装置:フランコ・ゼッフィレッリ
衣裳:ライモンダ・ガエターニ
振付:エル・カンボリオ

 今年のアレーナの《トロヴァトーレ》は、6月26日から始まり、全部で8回の公演。この日が最終公演でした。前半の配役には、ディミトラ・テオドッシュウやドローラ・ザジックなどの有名な歌手が並んでいましたが、この日のキャストで日本でも知られているのは、バリトンのアルベルト・ガザーレだけでしょう。しかしながら、実際に聴いてみると4人の主役はいずれも素晴らしく、巨大なアレーナでこの曲を歌うのに何の不足もありません。むしろ声のヴォリュームだけからいうとガザーレが一番非力にみえるほど。指揮者のモランディも、初めて聴く若手でしたが、ヴェルディの音楽のつぼをきちんと押さえた老練ともいえる棒さばきで、美しいメロディとカンタービレ満載のこのオペラを白熱と興奮のうちに堪能しきることができました。

 充実の歌手陣のうちでも特筆すべきは、ソプラノのラドワノフスキでしょう。暗みがかった力強い声でアジリタの技術もしっかりしています。東欧系らしく「r」の巻き舌が強すぎるところもありますが、フレージングは完璧なベル・カントの様式感にのっとり、第4幕冒頭の<恋は薔薇色の翼にのって>では絶妙のカンタービレを聴かせてくれました。高音で声を張るところと絞るところの使い分けも巧みで、広い会場に臆することなく弱声、といっても単なる小さな声ではなく、細く絞り込まれながら鋼鉄の糸のような靭さは失っていない声、をうまく織り込んで、素晴らしい効果をあげていました。このアリアはもともと、誰が歌ってもそこそこ泣かせてくれるだけの音楽をヴェルディが書いているのではありますが、彼女の演奏は本当に涙が出ました。満場の観客も同じ思いであったのでしょう、アリアの途中くらいからしわぶきひとつ聞こえなくなり、2万の観衆の注意が彼女の歌に集中して会場の空気がぐんと濃く張りつめているのがわかる雰囲気となります。そしてアリアが終わると、その緊張感が一挙に緩み、万雷の拍手と大歓声、そして平土間の客が板ばりの床を踏み鳴らす音が地鳴りのように沸き起こります。星空のもと、夜風に吹かれながら、こうした会場の熱気に身を包んでいると、本当にまたここに来て良かった、という実感がしみじみと湧いてくるのでした。

 <ミゼレレ>に入ってからは、低音の響きが少し足りない感じはありましたが、とにかく、こんな素晴らしいヴェルディ・ソプラノがまだいたのか、と舌を巻きました。容姿の方は、ちょっとテバルディを彷彿とさせるようなごつい感じがあり、美人とはいえませんが、肥満体でなく、夜目遠目には悲劇のヒロインをやっておかしくないように見えます。    
 テノールのベルティは、2年前のアレーナで《ナブッコ》のイズマエーレを聴いたことがあり、本格的な主役を聴いてみたい、と思っていた歌手でした。姿こそリチトラに似たずんぐりむっくりですが、びんびん響く声をもった素晴らしいリリコ・スピントです。声質はあまりロブストな方ではなく、テノールらしい明るめの声を力強くした感じで、ドミンゴに似た系統。高音にも強く、例の「テノール殺し」といわれる第3幕幕切れのアリア<見よ、恐ろしき炎を>の最後のハイC(おそらく半音下げていたとは思いますが)を長く伸ばし、観衆の大喝采を受けて、アンコールまでしてみせてくれました。ただし2回とも、最後の「all'armi」の「mi」ははっきり発音せずに「ah」で終わっていましたが。
 ガザーレのルーナ伯爵をアレーナで聴くのは、一昨年に続いて2回目。暗めの美声に加えて、タイツ姿がよく似合う格好の良い貴公子ぶりで、ヴェルディの敵役にぴったりです。特に、聴かせどころの第2幕のアリア<君の微笑み>では、スタイリッシュにすっきりとした歌いまわしと、中音域と同じ音色の胸声のままで到達する高音の力強さと輝きなど、この役に求められる特質を十全に満たしていた、と思います。同じ若手のヴェルディ・バリトン、大兵肥満のマエストリが、今回ジェルモン、アモナズロという親父役を好演したのとまさに好対照で、ふたりの持ち味をそれぞれ生かした配役でした。
 メッゾ・ソプラノのヴォーンは、ソプラノに近い明るい音色の声(コッソットのような華やかな明るさではなく、硬質で透明な感じの直進性のある声)ですが、十分に力強く、アズチェーナの暗い情念も表現できていました。






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