武田  確かにワーグナーはヴェルディの影響はほとんど受けていないけど、ヴェルディはワーグナーの影響は受けていることは認めます。ましてボーイトはもともとワグネリアンだし。
 だけど、僕はドイツ語はよくわからないけれど、ボーイトが作ったあのオペラの歌詞は、ワーグナーのちゃちな楽劇の台本に比べれば圧倒的に価値がある。
運営者 それは認めますが、僕が観に行ったスカラ座の「ローエングリン」、何でバレンボイムがヴェルディイヤーにあれを取り上げたかというと、それはわざわざヴェルディが、「ローエングリン」のイタリア初演をボローニャに聞きに行ってるからじゃないですかね。
手塚  だから「トラヴィアータ」の前奏曲は、「ローエングリン」の前奏曲の出だしとそっくりなんじゃないですか。ヴァイオリンのプルトを細かく分けて高音で静々とはじまる・・・かなりユニークな書法なので偶然かどうか・・。
 まあヴェルディのために弁護すると、トラヴィアータを書く前には、ヴェルディは「ローエングリン」を聞いてないと思うけど。
片山  「トラヴィアータ」が作曲されたのは1853年です。
手塚  ヴェルディが「ローエングリン」を聞いたのは、1860年代の後半ですよ。だけど出だしの部分は構造的にはほとんどそっくりです。途中でブンチャッチャになるんだけど。
武田  あのブンチャッチャがいいんですよ。
手塚  ワーグナーはブンチャッチャがないから、歌いにくいのは事実です。
片山  ヴェルディは、確かに地に足がついているような安心感があるよね。歌いやすいし。
運営者 1853年に「トラヴィアータ」が作曲されてからイタリア全土に広まるまで、あっという間ですよ。「山猫」の中に、サリーナ公爵を領民が鼓笛隊で「椿姫」を演奏して出迎えるシーンが出てくる。
武田  ゴールドラッシュの時のカリフォルニアにも、1850年代に到達してるんですから。
運営者 ものすごいヒットですよ。
I女史  作品として本当にすばらしいです。
武田  メロディー性という意味では、ワーグナーの中で僕が一番好きなのは「タンホイザー」なんだけど。
池原  私はヴェルディ・・ファンですが、「タンホイザー」は好きです。
手塚  一番イタリアオペラに近いと。
片山  まったく。
武田  序曲もいいし、巡礼の合唱もいいし。
手塚  ワーグナーの中では、比較的に全音階的な感じの音楽だし合唱も多用しているので。楽劇に転向する前なのでアリアっぽい歌もあるしね。
 実は「タンホイザー」の序曲で、冒頭の敬虔な感じの巡礼のモティーフの後で、弦楽がヴェーヌスベルグを表す怪しい和音の上昇音階を繰り返して弾くんだけど、そこはほとんど「トリスタンとイゾルデ」の音楽を先取りしてるんです。スコアを見ると、ダブル#とかダブル♭とか、得体の知れない調にどんどん上がって転調していくんだけど、ワーグナーはこのあたりからそっちの方にどんどん進んでいったわけです。
武田  ワーグナーはそもそもそっちに興味があったのに、大衆に迎合して、イタリアオペラ的な作品を作ったんですよ。
  <ここで加藤さんのローマ土産のトゥーランドットチョコレート登場>
加藤  ローマの歌劇場でムーティがやった「シモン・ボッカネグラ」、ほんとによかった~。
T女史 観てみた~い。
  <ここから、ヴェローナの音楽祭に着ていくためのチャイナドレスを作る話になり、「蝶々夫人の時は和服で行くのが良い」という話になり・・・>















